帰省のたびに、母にスマホの使い方を教えていました。LINE、写真の送り方、電話のかけ方。教えながら、毎回おなじことを思うんです。「これ、前も教えたよな」って。
うちだけではないみたいです。Yahoo!知恵袋には、祖父にスマホを教えても10教えて9は忘れてしまう、なるべく噛み砕いて教えているのにすぐ同じことを聞いてくる、という投稿がありました(Yahoo!知恵袋)。読んでいて、まるで我が家だと思いました。
でも、教え方を少し変えてから、母は前より自分で操作できるようになりました。特別なテクニックがあったわけではありません。「全部覚えてもらう」から「手元に残す」へ、目標をずらしただけです。
この記事は、その"手元に残す"教え方の話です。教えていてカッとなってしまう気持ちの整理や、「全部自分が教えなきゃ」を手放す話は、別記事の親にスマホを教えるとイライラ…私が見つけた5つの対処法にまとめました。ここでは、どう教えれば親の手元に操作が残るか、それだけを書きます。
親がスマホを覚えにくい理由
教え方の前に、ひとつだけ。親が覚えられないのは、やる気がないからではありません。 ここを取り違えると、どんなコツも空回りします。
まず、指の使い方そのものが違います。ガラケー世代は、ボタンを「押す」感覚で長く生きてきました。スマホの「軽く触れる」「スーッとなぞる」は、それとは別の身体の動きです。年齢とともに指先が乾くと、そもそも画面が反応しにくくなることもあるそうです。「押しても反応しない」の何割かは、やる気ではなく乾燥のせいだったりします。
次に、言葉の壁。タップ、スワイプ、アプリ、アカウント。私たちが息をするように使う言葉が、親には外国語に聞こえています。知恵袋にも、電話口で親に「インストールって何?」と聞かれ、ダウンロードとの違いをうまく説明できなかった、という投稿がありました(Yahoo!知恵袋)。教える側だって、意味を日本語で説明しろと言われると案外詰まる。用語は、それくらい厄介なんですよね。
もうひとつは、「どうせまた変わる」という諦め。アップデートで画面の見た目が変わると、覚え直しになります。ある相談では、親が「操作方法が変わるかもしれない」「見た目が変わると分かりにくくなる」と、必要性より不安が先に立ってアップデートを嫌がっていました(Yahoo!知恵袋)。せっかく覚えたのに、が続くと、覚える気も細っていきます。
でも、それって結局「覚えられない」ってことでしょ。教えても無駄なんじゃ……。
そう思いますよね。でも、逆なんです。覚えられない前提に立つと、教え方が変わります。 頭に叩き込むのをゴールにするから苦しい。手元の紙を見れば操作できる、を目指せばいい。さっきの祖父の相談でも、回答者は、覚える気がないのではなく覚えられないのだ、と諭していました。ここから、その具体的なやり方です。
覚えてもらうための、教え方の工夫
全部を一度にやる必要はありません。次に親から質問が来たとき、ひとつ試してみる。それで十分です。
専門用語を、親のわかる言葉に
「ここをタップして」が通じないなら、「この緑のマークを、軽くポンと押してみて」に言い換える。それだけで、伝わり方がまるで違います。
言い換えの手がかりに、私が使っている対応表を置いておきます。
| つい言ってしまう言葉 | 親に通じる言い方 |
|---|---|
| タップ | 軽くポンと押す |
| スワイプ | 指でスーッとなぞる |
| ピンチイン・アウト | 2本指でつまむ、広げる |
| アプリ | スマホの中の道具 |
| ダウンロード | スマホに取り込む |
| アカウント | 会員証のようなもの |
| パスワード | 鍵、暗証番号 |
さっきの「インストールって何?」の相談でも、回答者たちは比喩で説明していました。テレビの電波を受信するのがダウンロード、映る番組を増やすのがインストール。あるいは、スーパーで冷凍食品を買うのがダウンロードで、レンジで温めて食べられる状態にするのがインストール、と。正確さより、親の暮らしの中にある物にたとえる。そのほうが、すっと入ります。
一度に一つ、できたら一緒に
あれもこれも教えたくなります。でも、たくさん教えて大半を忘れられると、教えるほうが先に嫌になる。だから、今日のゴールはひとつでいい。「LINEで孫の写真を開く」だけ。
できたら、「できたね」と一緒に喜ぶ。おおげさなくらいでちょうどいいです。この小さな成功が、次も触ってみようかな、につながります。逆に、一度に詰め込むほど、お互いぐったりして、次に教える気力が減っていきます。
手を出さず、本人に操作させる
これ、いちばんやりがちな失敗です。「ここを押して、次はここ」と口で言いながら、待ちきれずに自分の指で全部やってしまう。親は、隣で画面を眺めているだけ。これでは、体に残りません。
手を出したくなるのをぐっとこらえて、「ここを押してみて」「次はどこだと思う?」と、指を動かすのは本人にまかせる。正直、見ているほうがもどかしい。でも、自分の指でたどった手順のほうが、ずっと残ります。
手順は、本人に書いてもらう
口で教えたことは、その場で消えます。だから、手順は紙に残す。ポイントは、こちらが書いて渡すのではなく、本人に書いてもらうことです。自分の字で書いたメモのほうが、あとで見返したときに思い出せます。
たとえば、こんな箇条書きで十分です。
メモの例:LINEで写真を送る
- 緑のLINEのマークを押す
- 送りたい相手の名前を押す
- 左下の「+」を押す
- 「写真」を押す
- 送る写真を押す
- 右上の「送信」を押す
知恵袋のベストアンサーでも、同じ発想のアドバイスを見かけました。母親自身にノートへ操作手順を書かせ、2度目からは自分でそのページを探させる、というものです(Yahoo!知恵袋)。別の回答では、よく使う操作を紙に書いて機械そのものに貼っておけば、覚えられなくても紙を見れば解決する、とも書かれていました(Yahoo!知恵袋)。覚えることをあきらめて、「見ればわかる」に振り切る。気が楽になる考え方です。
うちの親、メモしてって言っても書かないんだけど。
わかります。だから「書いといてね」と丸投げするより、教えている横で「今の、書いておこ」と一緒にペンを持つほうが早いです。書く作業そのものを、教える手順に組み込んでしまう。
「好きなこと」を入口にする
「これを覚えなさい」で動く人は、あまりいません。親も同じです。
入口は、義務ではなく、好きなこと。料理が好きならレシピが調べられる。歩くのが好きなら歩数が出る。孫がいるなら、写真がいつでも見られる。知恵袋にも、ガラホで写真や電話は使える母がスマホに興味を持ち始めた、という相談がありました(Yahoo!知恵袋)。興味の芽が出た瞬間は、いちばん覚えてくれるタイミングです。そこを逃さない。
「便利だからやろう」より、「これ、面白いよ」。動機の強さが、まるで違います。
使うものだけ、ホーム画面に
新品のスマホには、使わないアプリがぎっしり入っています。親からすると、どれが地雷かわからない。「変なところを触ったら壊れるかも」と、そもそも触るのが怖くなります。
だから、ホーム画面は思いきり削ります。電話、LINE、カメラ、写真。本当に使うものだけを1画面に並べて、あとはフォルダにまとめて奥へ。ついでに文字も大きくしておくと、見やすさが変わります。
シニア向けの「らくらくスマホ」を選ぶ手もありますが、これは合う・合わないがはっきり分かれます。さきほどの知恵袋にも、らくらくスマホは画面が小さいうえに癖が強く、かえって使いにくかった、という声がありました。普通のスマホの文字を大きくして、ホーム画面を整えるだけでも、けっこう別物になりますよ。
離れて暮らす親への教え方
近くにいれば、その場で何度でも教えられます。難しいのは、離れているとき。私も、次に会えるのが数ヶ月先、ということがよくありました。
帰省のときに、ひとつだけ。 お盆や年末に会えるなら、その半日で「今回はLINEのビデオ通話」と的を絞って、一緒に手順メモまで作ってしまう。あれこれ詰め込むより、ひとつを確実に。帰省のタイミングでまとめておきたい設定は、帰省時にやるべき親のスマホ設定リストにまとめました。
電話しながら、画面を見せてもらう。 離れていても、LINEのビデオ通話で「今どの画面?」と確認しながら教えられます。キャリアには、離れた家族のスマホ画面を見ながら操作を手伝ってくれる遠隔サポートもあるようです。具体的なやり方は、親のスマホを遠隔サポートする方法に書きました。
それでも、自分ひとりで教え続けるのは、正直しんどい。近所のショップや自治体のスマホ講座を「困ったらここ」として親に渡しておくと、ずいぶん楽になります。教える人を自分だけに背負わせない考え方は、イライラ対処法の記事のほうで詳しく書いています。
まとめ
親にスマホを教えるコツは、突き詰めると「覚えてもらおうとしすぎない」ことでした。
言い換えて、ひとつだけ、本人にやってもらって、手順は書いて残す。好きなことから入って、画面は使うものだけにする。どれも、頭に詰め込む代わりに、手元に残すための工夫です。
次に親から「これ、どうやるんだっけ」と聞かれたら、全部を教え直そうとせず、まずひとつだけ一緒にやって、そのやり方を本人のメモに書き足してみてください。
帰省した朝、食卓で母が、自分の字で書いたメモをめくりながら、私に聞かずにLINEを開いて、孫の写真に「届いてる」とつぶやく。この前まで一手ごとに「ちょっと来て」と呼ばれていたのが、うそみたいでした。完璧に使いこなせなくても、こういう瞬間がひとつあれば、離れていてもつながっていられます。
教えていてイライラが募るなら、親にスマホを教えるとイライラ…私が見つけた5つの対処法を。スマホ自体がどうしても難しそうなら、Echo Show高齢者向け設定ガイドのように、話しかけるだけでつながる手もあります。教え方も、つながり方も、ひとつではありません。