見守りカメラを親が嫌がる?5つの理由と「監視じゃない」伝え方

親子が見守りについて穏やかに話し合うイラスト

「監視されてるみたいで嫌」と断られた話

「心配だから、見守りカメラを置かせてほしい」

そう切り出したら、母に「監視されてるみたいで嫌」と断られた。3年前の私の話です。

父が亡くなって母が一人暮らしになった年でした。実家は新幹線で2時間半。すぐには駆けつけられない距離で、私は毎晩「今日も無事だろうか」と考えていました。それでカメラを提案したのに、返ってきたのは拒否。正直、ショックでした。心配して言ったのに、なんで分かってくれないの、と。

同じ経験をした人は、私だけではないみたいです。

高齢の母親が日中一人のため、見守りカメラを設置したいと考えています。(中略)機械を設置すると「これは何?」と質問されると思うのですが、正直に話せば親としては監視されているようで、いやなのではないかと思います。(中略)どのような言い方をしたら、納得してもらえるのでしょうか。

Yahoo!知恵袋

提案する前から「嫌がられるかも」と身構えている。この感覚、わかりますよね。

結論から言うと、我が家はカメラをあきらめて、センサー型の見守りに切り替えました。今は母も私も、その形に落ち着いています。どうやってそこにたどり着いたのか、遠回りした分も含めて書いておきます。

親が見守りカメラを嫌がる理由

「いらない」「大丈夫」。母が最初に言ったのはこの一言でした。でも、あとから振り返ると、その裏にはいくつもの気持ちが重なっていたんだと思います。私が母と話す中で見えてきたもの、そして調べていて「これもあるな」と腑に落ちたものを並べます。

見られている感覚が消えない

一番大きいのは、たぶんこれです。

カメラが自分のほうを向いている。ただそれだけで、電源が入っていようがいまいが「今、見られてる?」という感覚が残る。母は「テレビ見ながらお茶飲んでるだけの姿を、いちいち撮られたくない」と言っていました。自分の家なのにくつろげない、というのは、言われてみればその通りだなと。

これはわがままではなくて、たぶん誰でもそうです。実際、専門家の記事でもこんな指摘がありました。

常に監視されている緊張感から、親がリビングに行かなくなったという事例もあります。

Web eclat

見守るために置いたカメラのせいで、親が居間を避けるようになる。本末転倒ですよね。安否を確認したかっただけなのに、生活そのものを縮めてしまう。これは私がカメラをやめた大きな理由のひとつです。

「まだそんな歳じゃない」という気持ち

「見守りが必要」という言葉は、受け取り方によっては「あなたはもう一人だと心配」に聞こえます。

母はまだ自分で買い物に行けて、料理もします。日常に困っていない人ほど、「まだ元気なのに年寄り扱いされた」と感じるみたいです。カメラの提案が、本人にとっては老いを突きつけられる出来事になってしまう。私は「心配」のつもりでも、母は「もう衰えたと思われてる」と受け取っていたのかもしれません。

「あなたに迷惑をかけたくない」

意外だったのがこれです。

母が断った理由を後で聞いたら、「お金もかかるし、設定だってあんたの手を煩わせるでしょう」と。自分が心配されるより、私に負担をかけることのほうを気にしていたんです。「そんなものいらないから、自分の生活に集中して」というのは、拒否のようでいて、実は親心だったりします。

機械が増えることへの不安

スマホの操作にも時々つまずく母にとって、家に新しい機械が増えるのは、それだけで気が重いことでした。

「使い方がわからなかったら」「壊したら申し訳ない」。見守られる側は何もしなくていい、と説明しても、機械があるだけで身構えてしまう。ここは、あとで機器を選ぶときにかなり効いてくるポイントでした(母が操作しなくていいものを選んだら、この不安はほぼ消えました)。

「自分のことは自分でできる」という自立心

最後に、プライドの問題。

子どもから見れば心配でも、親には「自分のことは自分でできる」という自負があります。それを守りたい気持ちは、年齢に関係なく誰にでもあるものですよね。カメラの提案が、その自立心を横から押しのけるように感じさせてしまうことがある。

こうして並べてみると、母が断ったのは私が嫌いだからでも、頑固だからでもなかった。ただ、私の伝え方が母の気持ちの上を素通りしていただけでした。

逆効果になりやすい伝え方

親に受け入れてほしい一心で、つい口に出してしまう言い方があります。私も一度はやりかけました。でも、これは関係を遠ざけるだけでした。

不安を煽って従わせる

「倒れて誰にも気づかれなかったらどうするの」「孤独死のニュース、見たでしょ」。

脅すつもりはなくても、こう言われた親は「怖がらせて言うことを聞かせようとしている」と感じます。反発されて終わり、というだけでなく、その後の会話までギクシャクします。私はこれを言いかけて、母の表情がこわばったのを見て飲み込みました。

黙って設置する・別のものだと偽る

知恵袋には、カメラだと言わずにこう答えてはどうか、という回答がありました。

新しい最新の空気清浄機だよ…とか。

Yahoo!知恵袋

気持ちはわかります。話しても拒否されるなら、いっそ黙って置いてしまおう、と。実際、質問者はカメラを寝室のたんすの上に置いたそうです。

でも、もし後でバレたらどうなるか。「騙された」という感情は、たぶん見守りのメリットを全部ふっ飛ばします。見守りの土台は信頼関係なのに、その土台を自分で崩すことになる。私はここだけは避けたかった。

「みんなやってる」で押し切る

「今どき離れて暮らす親には常識だよ」「〇〇さんの家もつけてるって」。

他人を引き合いに出しても、親には響きません。むしろ「自分の家のことは自分で決めたい」という気持ちを逆なでするだけでした。

そして、もうひとつ。仮に一度うなずいてもらえても、それはゴールではないんです。介護ジャーナリスト・太田差惠子さんのコラムに、こんな事例がありました。

見守りセンサーを付けたところ、最初は父も喜んでいました。しかし、数カ月すると「見張られているようだ」と言い出し、結局撤去しました

けんぽれん健康コラム

押し切って設置までこぎつけても、監視されている感覚が消えなければ、親は自分で外してしまう。一度のYESより、続けられる形かどうか。ここを見落とすと、また振り出しに戻ります。

親が受け入れやすい切り出し方

ここからは、遠回りの末に「これは効いた」と感じた伝え方です。共通しているのは、私の心配を押し付けるのではなく、母が自分で決められる余地を残すこと。

「あなたのため」を「私が安心したい」に置き換える

「お母さんのために」と言うと、主語が相手になります。すると母は「また心配されてる」と身構える。

そこで私は言い方を変えました。

会話例

「お母さんが元気なのはわかってる。でも離れてると、私がどうしても心配になっちゃうんだよね。私の気持ちを軽くさせてもらえないかな」

これは「あなたが危ない」ではなく「私が不安」という、自分を主語にした頼み方です。母は「子どもを心配させたくない」という気持ちを持っていたので、この言い方のほうが届きました。断る理由が「私を守るため」から「私を安心させるため」に変わる。同じお願いでも、受け取り方がまるで違うんですよね。

選ぶのは親、という形にする

「カメラをつけて」と一方的に言うのではなく、いくつか並べて選んでもらう。

会話例

「毎日電話する、週に一度ビデオ通話する、それか機械で見守る。お母さんはどれが一番いい?」

自分で選んだことなら、人は受け入れやすい。母は「電話は毎日は面倒。機械のほうが気楽」と、意外にも機械寄りの答えを出しました。押し付けていたら絶対に出てこなかった答えです。

「1ヶ月だけ試す」で入り口を下げる

「一度つけたらずっと」と思うと、抵抗は一気に大きくなります。

「1ヶ月だけ試して、嫌だったらやめていいから」

やめる自由を最初に渡しておくと、ハードルがぐっと下がります。実際に使ってみたら「思ったより気にならない」となる人もいます。逆に、試して嫌なら潔くやめる。それでいいんです。さっきの「数カ月で撤去」の話も、お試し前提なら「合わなかったね」で済んで、関係にヒビは入りません。

場所と時間を一緒に決める

「リビングは嫌だけど玄関ならいい」「24時間は無理でも夜だけなら」。

置く場所や動かす時間を親と一緒に決めると、親も「自分の意見が反映された」と感じられます。ある体験記では、「家の中にカメラを設置するなんて……」と渋っていたお父さんに、庭から見える位置に置けば防犯にもなる、と切り口を変えて説得した、という体験記もありました(Impress Watch)。同じ機械でも、どこに何のために置くかで、親の受け取り方は変わります。

ちなみに、ここまでやっても「うちの親はそもそも機械の気配が苦手で」という場合もありますよね。それなら次の選択肢のほうが向いています。

カメラを嫌がる親に向く「センサー型」

いろいろ試しても、母のカメラへの抵抗は消えませんでした。そこで私がたどり着いたのが、映像を使わないセンサー型の見守りです。結果として、これが我が家の答えになりました。

カメラ型とセンサー型の違い

見守りの機械は、大きく分けて二つあります。

種類 わかること 親の受け取り方
カメラ型 映像で今の様子が見える 「見られている」感覚が残りやすい
センサー型 動きやドアの開閉を検知して通知 映像がないぶん抵抗が少ない

センサー型は、「動いたか」「ドアを開けたか」だけを拾います。映像は一切残りません。だから「撮られている」と感じにくい。母がカメラで一番嫌がっていた部分が、まるごと無くなるわけです。

知恵袋でも、92歳のおばあさんの見守りでカメラか警備会社かを迷っていた方が、本人が操作しなくていいものを探していて、回答では冷蔵庫や玄関の開閉センサーが勧められていました(Yahoo!知恵袋)。

映像がない、小さくて目立たない、やることは「動いたかどうか」だけ。「カメラはちょっと…」という親でも、これなら通ることがあります。

センサーでわかること

映像がなくて、本当に安心できるの? 最初は私もそう思いました。でも、使ってみると十分でした。

  • 人感センサーをリビングに:日中に動きがあれば「今日も起きて過ごしてる」とわかる。一定時間まったく動きがなければ通知が来る
  • 開閉センサーを冷蔵庫に:毎日開いていれば「ちゃんと食べてる」とわかる
  • 開閉センサーを玄関に:外出や帰宅の気配がわかる

たとえば昼休みにアプリを開くと、朝からの記録が並んでいます。8時すぎにリビング、10時に玄関。ああ、買い物にでも出たんだな、とわかる。顔が見えなくても、心配していたことのほとんどは、これで解消されました。

母が操作するものは何もありません。あの「機械が増える不安」も、置くだけで本人が触らずに済むから、ほぼ起きませんでした。

「そうは言っても、うちは実家にWi-Fiが無いんだけど」。これはよくある引っかかりですよね。機種によってはWi-Fiなしでも使えるものがあります。逆に「毎月お金がかかるのは困る」という場合も、機器や運用で年間コストは変わってきます。このあたりは見守りカメラとセンサーどっちがいい?で費用や条件ごとに整理しているので、迷ったら覗いてみてください。センサー型の考え方そのものは監視っぽくない見守りの方法にまとめています。

どれを選ぶか、我が家の場合

親の気持ちを尊重しつつ、自分の不安もちゃんと伝える。言葉にすると簡単ですが、私は1年くらいかけて、やっとこの形にたどり着きました。

私が選んだのはセンサー型です。理由は、母が一番嫌がっていた「見られている感覚」を丸ごと避けられたから。顔は見えませんが、「動いている」という事実だけで、私の心配はほとんど収まりました。

ただ、これは「カメラがダメ」という話ではありません。親御さんがカメラに抵抗がないなら、映像で顔を見られる安心感はセンサーにはないものです。地図として、ざっくりこう考えてもらえたらと思います。

もし今日、何かひとつやるとしたら。機械を買うことより先に、「私が安心したいんだ」と一度伝えてみることをおすすめします。我が家が変わり始めたのは、その一言からでした。カメラかセンサーかを決めるのは、そのあとで間に合います。