母に見守りカメラの話をしたとき、返ってきたのは「監視されてるみたいで嫌」の一言でした。
離れて暮らす75歳の母が心配で、リビングに1台置ければ安心できると思っていた私は、正直、面食らいました。でも母の気持ちもわかる。自分の家に、娘がいつでも覗けるカメラがある。それは確かに落ち着かないだろうな、と。
心配は消えないのに、カメラは使えない。しばらく手が止まりました。そのあいだに調べて、母にもう一度提案してみたのがSwitchBotのセンサーを使った見守りです。映像は撮らない。母が操作することも、意識することもほぼない。「動きがあったか、なかったか」だけがスマホに届く仕組みです。
これなら、と母は受け入れてくれました。この記事では、カメラを断られた私がたどり着いた「映像を撮らない見守り」を、製品の選び方から親への伝え方まで書きます。
映像を撮らないという見守りの方法
カメラを断られたとき、私が探していたのは「カメラの代わり」ではありませんでした。母が嫌がった理由、つまり「見られている感覚」を持ち込まずに、それでも安否だけは確認できる方法です。
それがセンサーでした。
カメラとセンサーで、わかることが違う
同じ「見守り」でも、カメラとセンサーはわかることがまるで違います。ここを混同すると製品選びを間違えます。
| 項目 | 見守りカメラ | SwitchBotセンサー |
|---|---|---|
| わかること | 映像で「今、何をしているか」 | 動きがあったか/なかったか |
| 映像 | あり(録画もできる) | なし |
| 親がする操作 | なし(ただし「見られている」意識は残る) | なし。存在をほぼ忘れる |
| プライバシー | 気にする親は多い | 映像がないので気にしようがない |
カメラは「顔を見て確かめたい」に応える道具、センサーは「無事だとだけ知りたい」に応える道具です。どっちが上ということではなく、親が何を嫌がっているかで選ぶものが変わります。この違いは見守りカメラとセンサー、どっちがいい?でも詳しく書きました。
なぜセンサーだと親が受け入れやすいのか
親がカメラを嫌がる理由は、たいてい「見られている」という感覚です。これは気のせいでは片付けられません。
離れて暮らす親の見守りを取材した記事のなかで、LIFULL介護の小菅秀樹さんは、常に監視される緊張感から親がリビングに行かなくなってしまった事例を挙げ、便利な機器でも「誰のために、なんのために使うのか」を冷静に考えてから導入したほうがいい、と話していました(Web eclat)。良かれと思って入れたカメラが、親の生活そのものを縮めてしまう。これは私がいちばん避けたかったことでした。だから私は、映像を撮らないセンサーを選びました。
センサーが検知するのは「人の動きがあったか」だけ。何をしているか、どんな格好かは一切わかりません。だから母は「これなら別にいいよ」とあっさり受け入れてくれました。断られたときの重さが嘘みたいでした。
もうひとつ、センサーには「親が操作しなくていい」という良さがあります。認知症が出始めた92歳の祖母の見守りを相談していた知恵袋の質問に、こんなベストアンサーがついていました。
冷蔵庫ドアや玄関ドアの開閉センサー。電話以外でも最低限の生存確認が可能。
Yahoo!知恵袋
ボタンを押す、アプリを開く。そういう操作が要るものは、高齢の親には続きません。センサーは置いておくだけ。親の側に負担がまったく増えないのが、地味だけど大きいところです。
SwitchBotセンサーの仕組み
仕組みは拍子抜けするほど単純です。
- センサーが人の動きやドアの開閉を検知する
- 実家のWi-Fi経由で、私のスマホに通知が届く
- アプリを開けば、いつ・何回検知したかの履歴が見られる
母がトイレに立てば「動きを検知しました」と届く。ただそれだけ。でも、離れていると「ただそれだけ」がどれほど心強いか、使ってみて初めてわかりました。
親の見守りに使えるSwitchBot製品
見守りに使えるSwitchBot製品はいくつかあります。私が実際に使ったもの、検討したものを、正直な感想つきで並べます。
人感センサー(まずはこれ1個から)
人の動きを赤外線で検知して、スマホに通知してくれるセンサーです。私が最初に買ったのがこれでした。
- 人の動きを検知して通知
- 電池式で配線いらず(電池は数年もつとされています)
- 壁や棚に置くだけ、貼るだけ
- 私が買ったときは2,000円ほどでした
トイレの前や廊下など、母が毎日必ず通る場所に置くのがコツです。1日一度もここを通らない、ということはまずない。だから「今日、動いた」がいちばん確実にわかります。見守りを1個だけで始めるなら、私はこれをすすめます。
開閉センサー
ドアや窓、冷蔵庫の開閉を検知するセンサーです。
- 開いたら通知
- 冷蔵庫・玄関・トイレのドアなどに
- こちらも電池式・配線なし
- 私が見たときは2,000円ほど
冷蔵庫に付ければ「ご飯を出したな」がわかるし、玄関に付ければ「散歩に出たな」がわかります。動きだけを見る人感センサーより、「何をしたか」に一歩踏み込めるのがこのセンサーです。
ハブ(これがないと外から確認できない)
センサーの通知を、実家の外にいる私のスマホまで届けるための中継機です。SwitchBotの「ハブミニ」などが使われます。
- センサーとインターネットをつなぐ
- これがないと、外出先や自宅から実家の様子を受け取れない
- 実家のWi-Fiに接続して使う
- 5,000円ほど
正直、最初は「センサーだけ買えばいいんじゃないの?」と思っていました。でもこれがないと通知が家の外に出ていかない。離れて暮らす親を見守るなら、実質必須の一台です。ここは割り切って一緒に買っておくのがいいです。
見守りカメラ(親がカメラOKなら)
もし親がカメラそのものに抵抗がないなら、SwitchBotの見守りカメラも選択肢に入ります。
- 映像でリアルタイムに確認できる
- スマホ越しに話せる双方向通話つき
- 夜間の撮影に対応
- 4,000円ほどから
顔を見て確かめたい、声も届けたい、という人にはカメラの安心感は大きいです。ただ、この記事を読んでいる時点で親にカメラを断られているなら、無理に説得するより、まずセンサーから始めるほうが早いと思います。
SwitchBotで親を見守る使い方
「買ったはいいけど、どう使えば?」。ここでつまずくと箱のまま眠ります。私が実際にやっている使い方を、簡単なものから紹介します。
人感センサーで「起きた」を確認する
いちばんシンプルで、最初におすすめの使い方です。
トイレの前か廊下に人感センサーを1個置く。朝、母がそこを通ると私のスマホに通知が届く。それを見て「起きたな」とわかる。仕組みはこれだけです。
うまいのは、通知が来ないことにも気づけるという点です。いつも動きがある時間帯に音沙汰がないと、「あれ?」と引っかかる。この「いつもと違う」に気づけることが、安否確認の本体だと私は思っています。
開閉センサーで「食べているか」を確認する
食事が心配な人には、冷蔵庫に開閉センサーを付ける使い方があります。
冷蔵庫を開ければ通知が来る。1日に何度か開閉があれば、まあ食べているんだろう、と推測できます。食欲が落ちていないか、生活のリズムが崩れていないかを、電話で問い詰めずにそっと確かめられる。母に「ちゃんと食べてる?」と毎日聞くのは、お互いしんどいですからね。
センサーを増やして生活リズムを見る
もう少し細かく見たくなったら、センサーを足していきます。私の場合はこんな配置です。
- トイレの前に人感センサー → 起きた
- 冷蔵庫に開閉センサー → 食べた
- 玄関に開閉センサー → 出かけた
これで「起きて、食べて、出かけた」という一日の流れがなんとなく見えます。先ほど引用した知恵袋のベストアンサーも、まさに冷蔵庫と玄関の開閉で生存確認を、という提案でした。理にかなっているんだと思います。
「30分制限」を知っておく
人感センサーの「動きがなくなってから通知」という設定には、最長30分という上限があります。「半日ずっと動きがない」を検知する用途にはそのままでは向きません。
ここを補うのが、複数箇所への設置です。トイレ・冷蔵庫・玄関のどこかで動きがあれば無事、どこも一日中反応がなければおかしい。そう考えて場所を分けておくと、異変に気づきやすくなります。
導入にかかる費用と必要なもの
気になるお金の話です。
費用の目安
| 構成 | 中身 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 最小構成 | 人感センサー+ハブ | 7,000円ほど |
| おすすめ構成 | 人感センサー+開閉センサー+ハブ | 9,000円ほど |
| しっかり構成 | 上記+見守りカメラ | 13,000円ほど |
※価格は記事執筆時点の目安です。最新の価格はAmazonでご確認ください。
大事なのは、これが月額のかからない買い切りだということです。最初に機器を買えば、あとはWi-Fiとスマホで使い続けられます。
比べる相手として、セコムやALSOKの見守りサービスは月額で数千円かかります。仮に月2,000円なら、1年で2万4千円、続けるほど積み上がります。SwitchBotは最小構成なら7,000円ほどの一度きり。手厚さが違うので単純比較はできませんが、「まず何か手を打ちたい」段階の入り口としては、始めやすい金額だと思います。
必要なもの
- 実家のWi-Fi:SwitchBotの通知はWi-Fi経由で届くので、これは必須です
- 自分のスマホ:iPhoneでもAndroidでも通知を受け取れます
- SwitchBotアプリ:無料でダウンロードできます
「実家、Wi-Fiないんだけど」という人は、この記事の後半(導入前の確認)で触れます。先に言っておくと、そこがいちばんの分かれ道です。
親に受け入れてもらうための伝え方
製品を選ぶのは、実は半分です。もう半分は、親にどう切り出すか。ここで失敗すると、機器がどれだけ良くても続きません。
「私が安心したいから」と伝える
「見守りたい」と言うと、親は「監視される」と受け取りがちです。主語が親になっているからだと思います。
なので私は、主語を自分にして伝えました。
- 「お母さんに何かあったとき、すぐ気づけないのが私は不安なんだ」
- 「私が安心したいから、これだけ付けさせてくれない?」
「あなたのため」ではなく「私のため」。この言い換えだけで、母の表情がやわらぎました。伝え方については見守りカメラを嫌がる親への伝え方にもっと詳しく書いています。
「映像は撮らない」をはっきり言う
カメラを断られた親には、ここを最初に言い切るのが効きます。
「これはカメラじゃなくてセンサー。動いたかどうかしかわからないから、何してるかは映らないよ」
映像がないことが伝わると、警戒が目に見えてほどけます。母も「撮らないの? じゃあいいよ」で、話はほぼ決まりました。
一緒に設定して、実際に見せる
設置は親と一緒にやるのがおすすめです。
自分が動いてみせて、母のスマホではなく自分のスマホに通知が届く様子を見せる。「ほら、これだけ。動いたって出るだけでしょ」と。実際に目で見てもらうと、頭で想像している「監視」との差が伝わります。
入れて終わり、ではない
ひとつ、正直に書いておきます。センサーは、入れたら一生安心という道具ではありません。
介護ジャーナリストの太田差惠子さんのコラムに、見守りセンサーを付けたら最初は父親も喜んでいたのに、数カ月して「見張られているようだ」と言い出し、結局撤去してしまった家庭の話が紹介されていました(けんぽれん 健康コラム)。受け入れてくれたあとも、親の気持ちは動きます。
だから、渋られたら無理に押し切らない。「じゃあ今回はやめて、また考えよう」と引くのも手です。押し切って入れても、あとで外されたら意味がない。私はそう考えて、母のペースに合わせるようにしています。
導入前に確認しておくこと
多くの人は帰省のタイミングで設置します。半日で終わらせるために、行く前に確認しておきたいことを3つ。
実家にWi-Fiはあるか
これがいちばんの分かれ道です。SwitchBotのセンサーは、Wi-Fiがないと通知を外に飛ばせません。
Wi-Fiがない実家にカメラを付けたいと相談していた知恵袋の質問で、回答者から「電話じゃダメなの?」と問い返され、質問者が設置を考え直したやりとりを見たことがあります(Yahoo!知恵袋)。ここは大事なところで、Wi-Fiもなく、そもそも機器が要るか怪しい段階なら、まず電話や声かけで足りることも多い。そのうえで「それでも心配だから仕組みで補いたい」なら、Wi-Fiを引く価値があります。光回線がなければ、工事のいらないホームルーター(ドコモ home 5G など)という手もあります。
置き場所を先に決めておく
帰省前に「どこに置くか」を決めておくと、当日がぐっと楽になります。
- 人感センサー:トイレの前、廊下
- 開閉センサー:冷蔵庫、玄関のドア
母には電話で先に「トイレの前あたりに小さいの置きたいんだけど、いい?」と一言。当日いきなり出すより、心の準備をしてもらったほうがすんなりいきます。
アプリだけ先に入れておく
自分のスマホには、帰省前にアプリを入れてアカウントを作っておきます。
そこまで済ませておけば、当日は機器を登録するだけ。実家での作業が数十分縮みます。限られた滞在時間を、設定でつぶすのはもったいないですから。
まとめ|カメラを断られても、道はある
カメラを断られたとき、私は正直、見守りそのものを諦めかけました。でも、母が嫌がっていたのは「見られること」であって、「気にかけられること」ではなかった。そこを分けて考えたら、センサーという答えが残りました。
出張で家を空けた夜、ホテルでアプリの履歴を開くと、その日の母の動きがぽつぽつ並んでいます。朝トイレ、昼に冷蔵庫、夕方に玄関。声も顔もないけれど、「今日もいつもどおり動いてたんだな」とわかる。それだけで、離れた土地でもちゃんと眠れる。私にとって見守りは、この安心のことでした。
まずは人感センサー1個とハブから。7,000円ほどの一度きりで、「今日も動いた」がわかる暮らしが始まります。全部そろえる必要はありません。1個置いて、母の反応を見て、それから足すか決めればいい。私もそうやって、少しずつ今の形にしてきました。
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